私は物心ついた頃からある時期まで
ヒトには見えないモノが視える事がありました。
誰かに話すとバカにされたり、呆れられたりするので
黙っている内に見えなくなっていました。
今思うと捉えていたのは強い感情の塊のようなもので、
悔いや恐怖など負の感情が特に際立っていたように思います。
今でも強烈にゾワっとする場所はありますが、
誰かには見え、他の誰かには見えないなんてモノは
今も昔も本当の意味では信じてはいません。
しかし、
あの頃確かに存在した、誰かにしか見えていなかった「何か」のお話。
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小学生の頃、とても仲良くしてくれる友達がいました。
ゲームが大好きなAくんと、何かといつも一緒に遊ぶBさん。
学校でも、家でも毎日のように一緒に遊んでいました。
両親の会社は目の前ですが共働きでいつも家にはおらず、いつも一緒に遊んでくれる二人の存在はとても大きく、ずっと仲良くしたいと思っていました。
いつものように夕方のチャイムが鳴るまでゲームをして、
二人が帰る時間になりました。
我が家は1階が倉庫、2階が住居の建物で
私が一番前、Bさんが二番目、Aくんが三番目という順番で2階から階段を降りていると1階の入り口がガラっと開き、母が帰ってきました。
母に今から友達が帰るんだと話しかけようと思い手を挙げたその時
ドンッ
という音が聞こえてきた直後、
Aくんが後ろから私の横をすり抜けるように階段から10段以上転げ落ち、入口のガラスの引き戸を突き破りました。
急いで母と共にAくんの元へ駆け寄り、救急車を呼び、出血箇所や痛い所など無いか確認しましたが幸いガラスが刺さる事もなく、見た目に大きなケガはありませんでした、すぐに搬送してもらい、診断結果かなりの軽傷だったという事で一先ず安心。
母と一緒にAくんの家に行き、その時に何があったのか?
私と母、Aくんとその両親でその時の事を話そうとするのですが
Aくんは誰かに押された、前には私が居た、1階に私の母が居た。
私はドンッという音が後ろから聞こえた、前には母が居た。
母は二人が仲良く一緒に降りてきて、Aくんが転んだように見えた。
おかしい。
なぜか私もそうだが、Bさんの事を誰も話そうとしない。
違和感を感じながらも私は聞いてみた、
「ねえ、いつもいる子が真ん中にいたよね?」
Aくんはハッとした顔で頷くも名前が思い出せないようだった。
母はその時二人しか見なかったし、
いつも一緒にいるのはAくんでしょう?と言ってきた。
そんな訳ない、Aくんと顔を合わせて頭にハテナが浮かぶ。
だってBさんはずっと長い事…
Bさん…?
名前が思い出せない。
男の子なのか女の子なのかも分からなくなった。
いつから一緒なのかも分からない。
どんどんボヤけてきて終いには顔も思い出す事が出来ない。
翌日学校でAくんと話すも
名前は出てこないし、どのクラスかも分からない、性別も分からないし…
Bさんの事はもうわかんないよという事でそれ以上は考えない事にした。
今でもAくんとは仲良くしていますが、Bさんとは会えていません。
今はもう建物はなく、近くに行く事もありますが何かを感じる事はありません。
なぜ一番後ろにいるハズのAくんを?
なぜ目の前の私を突き飛ばさなかったのか?
単純に偶然当たらなかっただけで私も対象だったのか?
今でも記憶に残る、とても不思議な体験でした。