実質賃金は経済指標において、労働者の生活水準や経済の健全性を把握する上でとてもとても重要な概念です。
実質賃金と名目賃金との違い
名目賃金と実質賃金の最大の違いは、物価変動の影響を考慮しているかどうかです。
名目賃金は、労働者が実際に受け取る金額を指します。これは給与明細に記載されている額面金額であり、税金や社会保険料を差し引く前の金額です。一方、実質賃金は、この名目賃金を物価変動で調整したものです。つまり、名目賃金を物価指数(通常は消費者物価指数)で割ることで算出されます。
名目賃金とは ?
名目賃金とは、労働の対価として支払われる賃金そのものを示す。つまり「従業員に支払われた金額=名目賃金」ということだ。
実質賃金とは ?
一方で実質賃金とは、簡単に言えば「物価変動を考慮した賃金」のことだ。実質賃金は「名目賃金指数÷消費者物価指数」という数式で算出される。
実質賃金(じっしつちんぎん, Real wages)とは、労働者が労働に応じて取った賃金が実際の社会においてどれだけの物品の購入に使えるかを示す値である。賃金から消費者物価指数を除することで求められる。このときの賃金、すなわち貨幣で受け取った賃金そのもののことを名目賃金(めいもくちんぎん, Nominal wages)という。
名目賃金と実質賃金には「税金や社会保険料」は含まれません。
名目賃金がどれだけ増えても物価がそれ以上に上がっていれば購買力は落ちます。
「労働者が受け取った賃金が実際に社会でどれだけのものに使えるか」
が分かる実質賃金ですが、例えば…
給与は50万円です、税金と社会保険料で12万円引かれて38万円。
水道光熱費や家賃、趣味や日用品に使ったお金は計35万円でした。(残3万円)給料が月10万円上がりました。
給与は60万円です、税金と社会保険料で16万円引かれて44万円。
水道光熱費や家賃、趣味や日用品に使ったお金は計42万円でした。(残2万円)
税金と社会保険料は実質賃金には関係ありませんが、手残り(可処分所得)を計算するのに必要なので表示してあります。
給与と物価の上がり幅が同じだと十分ではない、貧しくなるという例です。
年収の壁問題で物価が20%アップと試算されていましたが、その場合生活は何も変わっていないどころか10万円アップしたのに同じ生活をしていても手残りは減っているので貧しくなっています、もしも物価の上昇が小幅だったとしても生活水準を上げる為何かに費やせるほどの余裕はありません。
つまり賃金を上げるだけでは生活は豊かになりません、毎年給料が5%アップしても物価が6%上がってたら購買力は落ちています。
後述しますが、実際に2022年は名目賃金2%UP、物価指数3%UPだったので実質賃金-1%、2023年は名目1.2%UP、物価指数3.8%UPで実質賃金-2.5%でした。
給与額が増える事により消費税の負担は微量に軽減されるかもしれませんが、新たに発生したり増えたりする所得税や住民税といった税金は給与が上がれば上がり続けますし、社会保険料も同様に上がり続け結果支出は増え、より貧しくなります。
消費税の減税もしくは物品税を復活をさせて廃止したり、社会保険料の企業負担という企業側にとってよくわからない支出の仕組みを改善したりとなんらかの積極的な支出を促進するような対策を打った上で賃上げを行わなければ歪みは大きくなるばかりだと思います。
そしてそんな中、石破総理はなんと2020年代に時給1,500円に引き上げると財界や労組に呼びかけ、しかも全国平均です。(2024年11月26日 TBSニュース)
東京でもなく加重平均でもなく「全国平均で」と仰ったのでつまり2029年までに
こうするんだと。
ざっくり計算してみると
東京だけで見れば5.3%で済んでいるように見えますが、東京だけです。
加重平均で見れば7.4%、偏りを見た平均値ですのでこれで良さそうですが、
全国平均で見ると毎年8.6%上げなければ全国平均1,500円には届きません。
ちなみに全国平均1,500円の時、同じ推移で上がるなら東京は1750円です。
中卒でもなんでも年間休日115日で残業無しで8時間(休憩1時間)の社員なら給料は最低でも月30万円弱でスタートです。
ほぼ支援無しでひたすら企業に負担、結果国民に負担を強いるトンデモ発言。
企業は支出を抑える為に非正規雇用化がより進んでいく…と。
人手不足に拍車がかかる、中小企業への体力など深刻な懸念がある中1度に84円上げた「徳島ショック」以上の事をなんと2029年まで毎年日本全国で行うそうです。
確かにこれなら今後も名目賃金はより右肩上がりとなる事でしょう。
累進課税部分が重くなるし物価は上昇するので実質賃金は下がり続けますが…。
日本をどうしたいんでしょうか。
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さて、名目賃金はさほど重要ではない、さらに実質賃金がただの税引き後の手残りを見ているものではなく「購買力を見る指数」だという事が分かりました、では現状どのように推移しているのかを見ていきましょう。
日本労働組合総連合会 賃金レポート2024
最低賃金を上げても平均賃金が伸びるワケでもなく
日本は2022年4.2万ドルから2023年4.21万ドルと100ドルアップ、実は25位から24位に上がっていますがイスラエルが外されているので変化はありません。
むしろ2024年のデータが出れば分かりますがそろそろポーランドに抜かれそうです。
名目賃金指数が伸び物価指数が伸びる、それらの数値で割った指数…つまり実質賃金がマイナスという事は「賃金の上昇が物価上昇に追いついていない」という事。
2022年は名目賃金が2%上がり、消費者物価指数が3%上がったので実質賃金-1%。
2023年は名目賃金が1.2%上がり、物価指数が3.8%上がったので実質賃金-2.5%。
賃金が上がったのに豊かになっていないんです。
これらのデータを見た上で内閣府で出ている情報を見ると
名目賃金が100.1で実質賃金が103.1なので昨年に比べて物価指数は3%上がったという事が分かりますが、これ以降同様の資料はありません。
これは令和4年度年次経済財政報告ですが、令和6年度の資料を見てもこの名目と実質賃金の推移についてOECDのデータを基に作った同様の推移表はありません。
中小企業の出来の悪い役員の会議資料とほぼ同じ印象です。
これは厚労省の名目賃金指数と実質賃金指数の推移を線グラフにしたものですが、なぜか名目実質共に2020年を100?として謎の表示をしているので差はさほど開いていないように見えますが
よく政府でも使われている消費者物価指数(CPI)で全ての推移を見ればこれだけの差があるという事がよくわかります。
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名目や実質賃金とは話が逸れますが、これから最低賃金が怒涛の勢いで上がり続けたとしても上述の通り大半の人の手残りが増えるという話にはなかなか結び付かないでしょう、むしろ事業の芽を摘むインボイス制度、所得が少ないほど負担が増える消費税、働き控えを促進するかの様な現場感の無い諸々の制度…本当に去年末の話で基礎控除123万になっていれば稼ぐほど手取りが増える実感を演出できただろうに。
大企業に稼いだら稼いだ分だけ負担してもらうため法人税を累進課税にすれば税の様々な問題が解決できると思うので、2025~2026年のアレコレが落ち着いたらやってもらいたい、中小企業にとってはさほど変化がないような設定で。
平成元年消費税3%の導入タイミングで法人税が減り。
平成9年消費税5%の直後連続で法人税が減り。
平成24年に8%の税制法案が通った段階で法人税が減り。
8%が確定した平成26年以降連続で法人税が減りました。
そして消費税10%になるもこれ以上は下げられなかったのか、インボイスという形でごく小規模の事業者からも小銭を巻き上げはじめました。
30年不動だった103万の壁を動かしたのは国民民主党かもしれませんが、それを選んだのは民であり国民の力です。
選挙に行くのは面倒かもしれませんが、少しずつ自分達が思う方向に変わっていく社会は面倒を補って余りある面白い景色だと思います。
今年は選挙に行ってみませんか?
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