実質賃金指数、名目賃金指数(現金給与総額)の推移【調査産業計、事業規模5人以上】
令和5年度分は毎月勤労統計調査の速報の解説で表示されていた「お、これいいな」と思って見ていたグラフがどこかに消えてしまったので
もうソースを確認して自作することにしました。
本実質賃金指数は基準年を令和2年=100とした場合に令和2年と比べて購買力がどう変化したかを示す指標です。
確認した統計資料は最後にまとめますが、どれも総務省統計局で発表されている政府の資料です。
統計

実際の消費者物価指数の統計では「持家の帰属家賃を除いたCPI」が使われていたりするし、CPIは平均値なので生活必需品の上昇率はもっと高かったりするしで正式なものとはちょっと違いますので参考程度に。
…とはいえ厚労省の統計でも同じような値は使っています。
ちなみに令和7年度はまだ出ていませんが、速報値としては10月まで出ているので11月と12月を昨年と同程度で見込むと…
実質賃金は98.0、名目賃金は111.2、CPIは113.5ぐらい。
実質賃金は4年連続で減少することとなり、消費者物価指数は4年連続で増加することになりそうですが2月後半まで正確には分かりません。
ちなみに↑の表(実質賃金と名目賃金とCPI)をグラフにして推移を見てみましょう。

1990年代、実質賃金指数111に対して消費者物価指数は90以下でした。
物価指数は低く、実質賃金は高いので消費者は令和2年に比べて買えるものが多く豊かであると言えます。
物価は1990年から2013年にかけて緩やかに推移し、2014年から令和2年にかけて上がり続け、令和4年からは右肩上がりです。
それもそのハズ、消費者物価指数と名目賃金と実質賃金はつながっていますので、まったく同じ水準で実質賃金が下がり続けているから。
名目賃金と実質賃金の違い
ちなみに実質賃金と名目賃金との違いは以下の通り
名目賃金と実質賃金の最大の違いは、物価変動の影響を考慮しているかどうかです。
名目賃金は、労働者が実際に受け取る金額を指します。これは給与明細に記載されている額面金額であり、税金や社会保険料を差し引く前の金額です。一方、実質賃金は、この名目賃金を物価変動で調整したものです。つまり、名目賃金を物価指数(通常は消費者物価指数)で割ることで算出されます。
名目賃金とは ?
名目賃金とは、労働の対価として支払われる賃金そのものを示す。つまり「従業員に支払われた金額=名目賃金」ということだ。
実質賃金とは ?
一方で実質賃金とは、簡単に言えば「物価変動を考慮した賃金」のことだ。実質賃金は「名目賃金指数÷消費者物価指数」という数式で算出される。
実質賃金(じっしつちんぎん, Real wages)とは
労働者が労働に応じて取った賃金が実際の社会においてどれだけの物品の購入に使えるかを示す値である。賃金から消費者物価指数を除することで求められる。このときの賃金、すなわち貨幣で受け取った賃金そのもののことを名目賃金(めいもくちんぎん, Nominal wages)という。
名目賃金と実質賃金には当然ですが税金や社会保険料は含まれていませんので、所得税と住民税で15~55%、社会保険料が健康保険で11%、厚生年金で18.3%併せて労使合計で約30%、企業も個人も約15%の負担がこの指数の後に影響してきます。
実質賃金は経済指標において、労働者の生活水準や経済の健全性を把握する上でとても重要な概念です。

再度私の作ったグラフを見てみましょう。
「物価変動を考慮した実質賃金指数が右肩下がり」しています。
2024年にV字回復しているように見えますがこれでも100以下ですし、2025年はおそらく98.0程度なので今年もまた下がるでしょう。
名目賃金が右肩上がりになっているのは人手不足が賃上げ圧力となるのはもちろん、最低賃金やらなにやらで事実「名目賃金は上がっているので、賃上げは起きていると言える」んでしょうね、だからこそ財務省は「これまでのデフレ下の日本ではできな かった賃上げが直近のインフレによって可能になった」とか言うのでしょう。
政府や日銀は「賃金と物価の好循環」とか「賃上げで経済を回す」とか色々好きに言っていますし、先日も日銀がこの状況でなぜかまた金利を0.25%引き上げるというとんでもないことをして結果また日本は成長の芽を摘まれました。
企業はどこまで賃上げしても雇用維持を両立できるのか?どこかでまた税制的に優遇されている非正規の比率を上げるんじゃないか?規模が小さくも大事な日本の企業がどんどん廃業してしまうのではないか?
電気代は上がり続ける、水道もそう、地代は右肩上がり、賃上げという事は物流にしろ保険にしろ仕組みにしろ全てがコストアップしますが、企業はさらに社会保険料もそうだし赤字でも売掛金が未回収でも関係なく支払わなければならない謎の消費税とかいう様子のおかしい税金も回収されるんです。
消費税にはインボイスにより益税の問題、輸出還付金など様々な問題がありますが、それと赤字でも納税義務がある構造的欠陥とは別問題ですし、消費税は廃止して本来の目的通り正確に法人税の付加税として「売上税」もしくは「付加価値税」として制度設計し直して通せば良いんです、売上税で通らなかったから消費税にするとか冗談みたいな通し方はもうしないでくださいね😊
賃上げ不可能な環境をこれだけ壮大に作っておいて「賃上げが可能になった」は鬼畜が過ぎます。
当たり前の話ではありますが、企業の売り上げが伸び、利益が高まり、金利情勢は安定している状態というのが前提としてある中で、税負担や事務負担を減らし、社会保険料が減る、そして個人は働いた分だけちゃんと手元に残り、その手元資金を使ってもよいと家計が感じられる環境が「長く続く」とき初めて実質賃金は本当の意味でプラスになるのではないでしょうか。
高齢化に、そして少子化に効く政策を打ち主に自給率を5割、そして8割、9割と引き上げるべく農業に関して兎に角予算を充てる、政府支出で明確に「日本の農業の主役である米にフォーカス」し、企業が投資するような需要を生み出すことが日本を救う一手のように思います。
米は日本人なら…といった精神性の部分だけでなく備蓄性が高いことは今回の備蓄米騒動でも分かりましたし、民のみでなく食料安全保障の面で国防にも繋がります。
消費税は誰でも10%、住民税も非課税世帯でなければ10%、健康保険料は給与所得者ならざっくり11%の半分で5.5%、厚生年金は18.3%の半分で9.15%、所得が330万円以上の人は所得税が20%以上になります(所得税率は最低5%~最大45%)。
消費税10%+住民10%+保険5.5%+年金9.15%+所得20%…で54.65%。
控除もあるので正しくはもう少し上の収入の人からですが、設計上それなりに多くの方が「税金が半分以上」になる設計はもはや現代の五公五民。
落ち込みすぎて需要に追い付いてしまった供給能力を正しい供給能力まで戻さなくてはならないんです。
1990年代、消費者の購買力は強く生活水準も高かった頃…当時の為替は1ドル160円台、そう、今と同じぐらいです。
1980年代から10年かけて1ドル120~150円を160円台に持っていき「よい円安」と呼ばれていたそうですが、2025年の今、購買力は弱く円安は生活コストを直撃。
生活水準も当時以上…とは言えません。
制度で疲労した日本ですが、まさにこの制度を、ここを大変だし正しく直すのは難しいかもしれないけどやり直さないと実質賃金が再び上向く未来は見えない。
ねじれにねじれきった日本、どうすれば解けるんでしょうね🤔
ではでは。
資料
【実質賃金(就業形態計(Total))】
総務省統計局「実質賃金(現金給与総額) 指数及び増減率-就業形態計(5人以上)(調査産業計,製造業)-消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)による」
【名目賃金(就業形態計(Total))】
総務省統計局「現金給与総額 指数及び増減率-就業形態計(5人以上)」
【CPI】
名目賃金÷実質賃金
