2024年の最低賃金は全ランク50円UP?これまでの推移から感じる課題

第69回中央最低賃金審議会にて

最低賃金は生存権を確保した上で労働の対価としてふさわしいナショナルミニマム水準へ引き上げなければならず、まずは2年程度で全都道府県において 1,000 円以上、その上で中期的には一般労働者の賃金中央値の6割という水準を目指し

~中略~

最低賃金近傍の労働者の暮らしは極めて苦しいと主張

~中略~

本年度は「誰もが時給 1,000 円」への到達に向けてこれまで以上に前進する目安が必要であり、併せて地域間額差の是正につながる目安を示すべきであると主張

中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告より

労働者側としては世界標準までの引き上げ、そもそも暮らしにかかる費用をまかなえていない、物価はさほど変わらないのに地域間の差は激しいし低所得者の生活は厳しい!という指摘。

…まぁ先日書いた「社会保険の適用拡大からの年収の壁問題、企業と個人の負担を考えてみる。」の中の話で言えばある意味最低賃金が上がるほど低所得者を締め付けるみたいな仕組みで動かないといけないので最低賃金が極端に上昇したとしても「暮らしにかかる費用」が賄えるかというと難しいかもしれない。

使用者側としては当然最低賃金は自分達の経営判断とは別の所の動きだし、雇用している方々の環境もあるし今で言えばギリギリの方を社会保険に加入させたり壁を意識した判断が必要なので慎重にならざるを得ない。
さらに賃上げの負担は大きく、Cランク地域の大幅な賃上げは政府が何らかの形で支援を強化しないと倒産リスクもあると懸念。

労使の意見が一致しなかったため、公益委員の見解に基づいて各地域の最低賃金引上げ額の目安としてAランクは50円引き上げを提案

(Aランク地域:埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪)

そして厚労省は7月25日に広報で

仮に目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合の全国加重平均は1,054円となります。この場合、全国加重平均の上昇額は50円(昨年度は43円)となり、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額となります。また、引上げ率に換算すると5.0%(昨年度は4.5%)となります。

令和6年度地域別最低賃金額改定の目安についてより

全ランク地域50円アップにより全国加重平均を現在の1,004円から1,054円へ。

使用者側の意見は聞こえないスタイルのようです🤣
まぁでも最低賃金が上がるのは良いコトです、収入増えないと使えませんからね。

東京は今1,113円ですから1,163円(4.49%UP)になるって事ですね。

毎年最低賃金の度給与体系まで見直さなければならない中小企業の幹部達は阿鼻叫喚のさ中といった所でしょうか、今年も10月1日から無条件に時給が50円アップしちゃうかもしれない学生たちは大喜びですね。

東京に関して言えば2021年から2022年は2.7%、2022年から2023年は3.68%、そして2023年から2024年は4.49%となかなかの上昇幅。

全国加重平均で言うと→2023年は4.28%、→2024年は4.98%。
額が上がるほど割合は抑えられていくものですが、まだまだ攻めるようです。

【全国加重平均値】
各都道府県の労働者を最低賃金で掛けて足し、全国の労働者数で割った数字

●県[最低賃金×労働者]+▲県[最低賃金×労働者] … … (都道府県全て)
÷ 全国の労働者数 = 全国加重平均値

去年はとにかく1,000円を超えたかったんだろうと思いましたが、普通にそれ以上に上げてくるつもりの厚労省、ついてこれない企業への対策はどうするんだろうか。

最低月額の推移と計算

東京の最低賃金の上昇による月額の推移を見ていきましょう。
最低賃金による最低月額の計算は仮に年間休日115日として

250日 × 8時間 × 時給 ÷ 12ヵ月 = 月額

と、します。

週休2日以上+(115日)、1日8時間労働だとするとこんな感じですね。

(2024) 1,163円 = 193,833円(仮)
(2023) 1,113円 = 185,500円
(2022) 1,072円 = 178,667円
(2021) 1,041円 = 173,500円
(2020) 1,013円 = 168,833円
(2018) 985円 = 164,167円

高卒の初任給が大卒に追いつくのも時間の問題ですね。

厚労省 令和4年度 新規学卒者の学歴別にみた賃金

厚労省 令和5年度 新規学卒者の学歴別にみた賃金

高卒は18.12万から18.68万で最低賃金程度(1,113円で18.55万)
大卒は22.85万から23.73万でさっきの条件なら時給1,371円から1,423円。

最低賃金は1,500円にしたいっぽいので大卒もこのままでは…というか人手不足がより深刻になれば時給もハネるだろうしアルバイトした方が給料面も待遇も良いとかいう時代も間近のような気がしますね。

しかし大卒が初年度ボーナス出ないとして×12で2,847,600円/年とか、う~ん。
努力に見合わない気がしてならないなぁ…ちなみに大手の初任給(昨年)は

キッコーマン 219,000円(2022年)/230,000円(2023年)
日本郵政 224,200~251,100円(2022年)/234,200~262,300円(2023年)
日本マクドナルド 230,000円(2022年)/250,000円(2023年)
ユニクロ 239,000円(2022年)/255,000円(2023年)(海外リーダー候補30万)

昨年の時点で基本給が時給換算で1,500円を超えている企業も出てきたりして、金融政策はやると言ってやらなかったり進捗はありませんが、賃金の上昇に関しては前向きに進んでいるような気がします。

今年も10月に確定したらまた記事にします。

ではでは。

【過去の最低賃金について書いたもの[2021年][2022年][2023年]】

・・

・・・

全米大学雇用者協会(NACE)から、2024年大卒のBusiness向け年収,907(average)

(2024) $63,907 = 9,536,000円(2023.10.7 $1=149.22円)
(2023) $62,069 = 9,022,000円(2022.10.7 $1=145.36円)
(2022) $60,028 = 6,665,000円(2021.10.1 $1=111.04円)
(2021) $55,911 = 5,888,000円(2020.10.2 $1=105.32円)

(百円の単位は切り捨て)

物価の問題や社会保障の問題、さらに安全面や衛生面、サービスや環境の問題で給料が高いから他の国が良い!と単純に言える状態ではありませんのでひとつの指標にしかなりませんが、ある意味でこのまま続ければ強い日本を取り戻せそうな気もします、制度さえ…こんな滅茶苦茶でなければ。

企業は今、人に投資をしているように見えます、しかしそれは無駄を省き、リスクを徹底的に除外、行動を縛り、制度で補償し縛り、人の手でなくても良い部分を見極める為に人を使っているようにも見えます。

ある時「人の勘によって行われていた業務」「熟練の技巧で成されていた作業」「目で確認しなければならなかった高度な単純確認」は人の手から離れます。

勘の鋭い人財、熟練の業を持った人財、高度な単純作業の出来る技巧者達は新たな人の手から離れる為の作業を行います。

シンギュラリティを控えるこれからの時代に代替案も出さず文句ばかり言う人、調べれば誰にでも分かるような情報を一瞬インプットして人をバカにするような人は不要でしょう、安いものが安い値段で手に入らないからもう要らない!みんなももう要らないよな!ではなく、見合った環境を得る為に努力しなければならないハズです。

逆に周りからは笑われるような案でも容赦なく出し、様々な可能性を探し続ける人はどれだけ人の手から「作業」が離れたとしても輝き続けるのかもしれませんね。

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